妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「......ここの家の人間と知り合いだったのか?」
やっと口を開いて出た言葉がそれで、自然と眉根が寄っていく。
「もちろん。元ご近所さんだし、知り合いでもおかしくないでしょ?」
「あぁ、いや。そうだが」
「青砥」という表札に高志さんの視線が向かい、目元が険しくなる。
今のは単純に近隣の住民としてではなく、アオト株式会社の関係者との関係を聞いてきたのだろうか。
質問にどんな意味があるのか疑問に思う。
「今日はどんな用事があってここへ?」
「それは......」
親しみを感じていない相手だからか、自分のことをあまり詳しく話したくなくて、つい黙ってしまう。
そんな私の態度が気に触ったらしく、高志さんはひどく顔を歪めた。
「さっき大和から受けた忠告は、まさかこのことか?」
兄の名前が出た途端、嫌な予感が心に広がる。
余計なことを言っていませんようにと願うも、思いはすぐに打ち崩された。
「美羽と結婚するのは、手強いライバルがいるから簡単にはいかないと。その相手は俺の
目と鼻の先にいるとも。そんな男などどこにいるのかと思っていたけれど、青砥恭介だっ
て言うなら納得がいく」