妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
玄関口で見守っていた晶子先生が心配そうに門扉まで近づいてきたけれど、高志さん睨みつけられたためそこを越えられない。
「来い。家で話をする」
「私は行かない!」
高志さんに連れて行かれそうになり、必死に反発する。
もみ合いになったその時、警告するように鋭くクラクションが鳴らされた。
迫ってきた車が青砥家の駐車場前に停止した。
ライトが眩しくて目を細め、運転席から機敏に降りてきたすらりと細長い体を見つける。
「美羽から手を離せ」
聞こえた声に笑みが浮かんだ。大きく安堵しながら私は彼の名を呼ぶ。
「恭介君!」
彼の元へと駆けてこうとするも、伸びてきた手に捕まり、高志さんから離れられない。
「行くぞ」
言うなり、高志さんに腕を強く引っ張られた。
悲鳴に近い声で「痛い!」と叫ぶと、広い歩幅で向かってきていた恭介君のスピードが一気に上がる。
恭介君が私を掴む高志さんの手を掴んだ。
冷ややかな眼差しで高志さんを見据えながら、その手を恭介君が手荒に掴み上げる。
今度は高志さんが苦痛の声をあげ、私から手を離す。
するとすぐに私は、恭介君のもう片方の手に腕を引かれ、彼の横へと移動する。
「お、お前! 良いか、俺と美羽は」
「彼女は渡さない」