妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
トレーをテーブルに置き、代わりにテッシュの箱を持ってしゃがみこんだ晶子先生の元へ急いで向かう。
「大丈夫ですか?」
テッシュでぽんぽんと軽く叩きながら紅茶を拭き取る手元を見つめ、それはなんだろうと疑問が浮かんだ。
写真の台紙みたいに見えるけどと首を傾げると、私の傍から覗き込んできた恭介君が顔をしかめた。
「それ。捨ててなかったのか」
「これは、この前とは違うお嬢さんのなのよ。恭介に見てもらうだけでもって、強引に渡されてしまったって昨日お父さんが」
「興味ない」
「そうよねぇ」
納得の顔をした後、晶子先生が私をちらりと見た。
意味ありげな視線を受け、やっとそれがなんなのか理解する。
「......お見合い写真ですか?」
「あぁ」
確信に近い気持ちで問いかけたのに、彼本人に認められるとやっぱりショックで、気持ちが落ちていく。
しかも、ふたりの会話から見合いを持ちかけられたのは初めてではないらしい。
みんなが憧れるくらい素敵で、しかも独身。
そんな話が山のようにあったとしても少しもおかしくないと頭では分かっていても、心がうまく受け入れられずにいる。
「お父さんも、無下にもできないからうんざりしてるみたい。そろそろ恭介を本社に呼び戻すつもりみたいで、さらに重要なポストに就けたら余計うるさくなるだろうから、早く良い相手が現れてくれないかってこぼしてるわよ」