妻恋婚~御曹司は愛する手段を選ばない~
「そんなことを?」
恭介君のため息で気分はさらに沈む。
晶子先生の手によってテーブルの上に置き直された見合い写真の表紙を視界に宿しただけで、もやもやとした思いが心の中でじわり広がっていく。
「淹れなおしてくるわね」と再びトレーを持ち、晶子先生が踵を返した。
この中で微笑んでいるだろう女性はどんな人だろう。
有名企業の代表を父に持ち、才色兼備で、この先アオト株式会社を背負って立つ恭介君にふさわしい人。
見たくないのに、気になって仕方がない。
胸がチクチク痛くて、切なさと悔しさと羨ましさで息苦しい。
耐えきれず、見合い写真へと伸ばした手を横から掴み取られた。
「俺には関係のない人だ」
真っ直ぐな瞳に捕らえられ、目を見張る。
「隣にいて欲しいと望む女性は美羽ひとり。はやく美羽も俺を求めて」
彼にそっと頬を撫でられて、わずかに体が震えた。
切望する声と眼差しに甘く心を揺さぶられ、頬に触れている彼の手に自分の手を重ね置く。