一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
たかが8年、されど8年だ。

イベント事とは無縁の生活。

大学四年間は、長嶺教授にひたすら付きまとい、その技巧と感性を盗みたいと必死だった。

その間、萌音のことは少し遠くから眺めるだけで満足した。

止まらない本能は妄想の中の萌音を相手に自ら解放していた。

有り余る生理的欲求は満たされなくても、学問と仕事で認められることで自尊心を保つことができた。

後6年、4年、2年・・・。

そうやって自らと長嶺教授が設けたタイムリミットが少しずつ減っていくことは、想像以上の楽しみとなり、ついに海音が長嶺教授の課題を成し遂げた時には言い様のない達成感で満たされたものだ。

『本当にやり遂げるとは思わなかったよ。海音を弟子として、男として認めよう。後は、萌音に認められるかは海音の頑張り次第だ』

つい先日、長嶺教授に数年前の約束を覚えているかと確認にいった際に言われた言葉。

それは、海音が萌音を手に入れるための争奪戦に名乗りを上げる権利を手にする切符だった。
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