一級建築士の萌える囁き~ツインソウルはお前だけ~
「萌音は中2の時の中等部と高等部合同の教育講演会を覚えてる?」

萌音は驚きで目を見開いた。

「あの時から俺は゛運命の片割れ゛の存在を信じている」

更に続いた海音の言葉は、萌音の心の鍵を完全に破壊しようとしていた。

「・・・野瀬先生の話?」

「ああ、萌音も、あのときの講師がN大学医学部の野瀬先生だって知ってたんだな」

知っているも何も、揺れる中等部時代の萌音を暗闇から救ってくれたのは野瀬先生だ。

萌音が通った大学の現教授。

学部は違っても、有名な先生だったから名前と存在は把握していた。

「勉強一筋だった俺は、色恋に疎くて、だが一丁前に興味はあって揺れていたんだ」

高校生の頃も、大学生の頃の゛さわやん゛と同じような髪型に黒縁眼鏡のザ・理系男子だったと海音は自嘲した。

受験生だった高校生の頃は彼女がいなくても仕方ないとはいえ、大学生になれば出会いも自由度もあがる。

髪型と眼鏡で擬態しても、海音の格好よさは見る人が見ればわかる。

一人や二人とはいわず言い寄って来た女性の数はかなりの数に上るだろう、と萌音は思っていた。

「あの講演を聞いてから、遊びに走ったり興味本意に女性に手を出したりはしない自分に誇りが持てた。何より・・・俺には異性を好きになる感情がまだわかってなかったから、わからなくても正常だとわかって安心した、というのが本音だ」

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