転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 自分の余計な考えが混じらないよう、リヒャルトとセスは直接話をすべきだと思った。だが、あまりにも不用意な行動ではなかっただろうか。
 不安に駆られたまま、リヒャルトの上着の裾をもう少し強く引っ張ると、リヒャルトが不意にこちらに視線を向ける。

「いや、助かった。たぶん、俺が考えていたのは――」

 リヒャルトは首を横に振る。

「セスに会ったら、言ってやりたいことが山ほどあったんだが、半分も言えなかったな」

 苦笑交じりにそう言い、ヴィオラの手を取る。

「こんな話に付き合わせてしまって悪かった。ニイファを連れて早く帰ろう。満月宮に」

 リヒャルトの手は、少しひんやりとしていた。ぎゅっとその手を包み込み、ヴィオラはあえて子供っぽい笑みを作る。

「そうですね。お腹空いちゃいました。なにかお菓子を用意してもらいましょう」
「お菓子ばかり食べていると大きくならないぞ。食事もきちんととれ」
「お食事もちゃんといただきますよ! でも、お菓子もいただきます!」

 やはり、こうして子供のように振る舞うのが今は一番いいのかもしれない。
 ヴィオラにはリヒャルトの本心まで悟ることはできないから。
こうしてヴィオラの世話を焼くことで、少しでも彼の意識を逸らせるのなら。
 今は、それでいいと思った。
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