転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「陛下は、君主という者は時として非情な判断を下さねばならないということを、私に見せたかったのでしょう? 私には、それができるかどうかわかりません。でも、リヒャルト様を支えられる存在になりたい。今はそう思います」

 ヴィオラが一息にそう言うと、皇帝は目を細めた。鷹揚にうなずき、ヴィオラの肩に手を置く。

「――励め」
「はい、陛下。私、頑張りますね!」

 最後はわざと子供じみた声音で言って、その場の空気を壊す。
 父が肩を落とすのが視界の隅に映ったけれど、ヴィオラの方からは声をかける気になれなかった。
 ◇ ◇ ◇
 
 ――今日、ヴィオラは正式にリヒャルトの婚約者となる。仕立て直した皇妃のドレスを身に着けて。

「とても可愛らしいわ、ヴィオラ」
「皇妃様は……お嫌じゃないですか?」
「嫌だなんて、とんでもない。あなたが娘になってくれたら嬉しいと――前から言っていたでしょう?」

 けれど、そう言った割に急に皇妃は浮かない表情になった。

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