転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
「もうそんな時間なの? ごめんなさい、気づいていなかった」

 なにをそんなに焦っているのだろうと、自分でも思う。
 だが、父がこの国を訪問すると聞いて以降、ヴィオラの自主学習の時間は長引く一方だった。少しは成長しているところを見せなければと焦燥感にかられているのだ。
 厨房に入って新しい料理やお菓子のレシピを開発するのは大きな楽しみであったけれど、それもこのところすっかりご無沙汰だ。

「いえ、いいんです。まだ間に合いますから。さあ、お召し替えをしましょう」

 ニイファが選んでくれたのは、春らしい色合いの淡いピンク色のドレスだ。
 上半身はシャーリング加工が施されていて、胸元には黄色い花飾りがつけられている。スカート部分は、幾重にもフリルを重ねてあり、フリルの合間から繊細なレースがのぞいていて、可愛らしくありつつも豪華な雰囲気だ。
 真珠の飾りボタンのつけられた靴に、レースの靴下。いつもながら、年齢より少し幼く見える装いだ。

「……緊張する」

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