転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 そこは皇妃のすぐそばで、ヴィオラが皇妃に気に入られているということをイローウェン国王夫妻に見せるための場所でもあった。
 それから皇族達が順に入場してくる。
 この場に出席を許されているのは、成人した皇族だけだ。リヒャルトの弟妹にあたる皇子達や皇女達。それから、皇帝の妃達が所定の位置に立つ。
 最後に皇帝が皇妃を伴って入ってきた。オストヴァルト帝国の皇族としての正装に身を包んだ皇帝は、ヴィオラの目にも堂々として見えた。ヴィオラにはごくまれに甘い顔を見せることもあるのだが、今はいかめしい表情をしている。
 そのすぐそばを歩く皇妃は、背筋をまっすぐに伸ばし、優雅に歩んでいた。口元にはかすかに微笑みを浮かべている。

「このたびは、よき縁を結んでいただき感謝申し上げる。イローウェン王国にとって、大きな飛躍のきっかけとなるだろう」

 久しぶりに見る父は、以前よりもなお遠い人のように見えた。口から発せられた声にも、聞き覚えがない。

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