転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 ヴィオラはぎゅっと銀のフォークを握りしめた。
 安心して送り出せるというのは方便だ。ヴィオラがイローウェン王国からいなくなった方が、なにかと都合がよかっただけ。

「ええ、本当に。私もいつも感心していますの。遠いこの国に来て、本当に心細いでしょうに」

 皇妃はにこやかにザーラに返す。こちらは、心からそう思ってくれているのだ。

「そうだな。なにもしてやれなかったが――立派に育ってくれた」

 父が、ヴィオラに向かって優しい目を向けた。

(なにもしてやれなかった、じゃなくて、最初からやる気がなかった、よね)

 父に向かって反発したい気持ちもむくむくと芽生えてくるものの、ヴィオラはそれも意思の力で抑え込んだ。
 太陽宮の厨房にいる料理人は、全員一流の腕を持っているはずなのに、今日の料理は砂をかんでいるようだ。味がまったく感じられなくて、機械的に顎を動かし、飲み込むだけだった。

(……こんなに食卓がつらいのって、久しぶりかも)

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