転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 リヒャルトとの婚約が成立した経緯を考えれば、そんなこと言えるはずもなかった。
 だが、この場で父に逆らうのは得策ではない。ヴィオラはそっと一歩後退し、淑女の礼をとって頭を下げる。

「……近いうちに、ゆっくりお話ししましょうね。婚約式の衣装のこともありますもの」

 父に続いて出てきたザーラがそう声をかけてきたが、ヴィオラはザーラの誘いは首を横に振って断った。

「いえ、衣装は皇妃様が用意してくださるのでけっこうです」

 ヴィオラが皇妃の庇護を受けているということを周囲にアピールするためにも、皇妃のおさがりを身に着ける必要がある。

「そう。皇妃様が仕立ててくださるのなら、その方がよろしいかもしれませんわね」

 ヴィオラの頭の先から足の先までじろじろと見ながら、ザーラはそう言う。

「行きましょう、陛下。私、少々疲れました」
「長旅だったからな。新月宮でのんびり過ごすとしよう」

 遠ざかっていくふたりを見送り、ヴィオラは、はぁっと息をつく。

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