転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ~婚約式はロマンスの始まりですか!?~
 いくら冷遇されていたといえど、王女が〝事故〟で命を落としたら、誰かが責任を取らねばならないのだから。

(……だめね、落ち着かないと)

 頭の中で、先ほどまでさらっていた歴史の教科書の内容を思い返し、平常心を取り戻そうと試みる。

「ヴィオラ様、額に皺が寄っていますよ」

 ヴィオラの髪をとかしていたニイファが、背後からそっと額に触れてくる。その様子を鏡越しに見つめながら、ヴィオラは頬を膨らませた。

「……どうしても、緊張してしまうのよね」
「わかりますとも。でも、それだけではないでしょう――今は、目の前のことだけに意識を集中なさった方がよろしいかと」
「ニイファは鋭いのね」

 ニイファには完全にばれてしまっている。ヴィオラが父のことだけではなく、リヒャルトの隣に立てるよう焦っているということも。

「何年もヴィオラ様のそばにおりますもの」

 ふふっと笑ったニイファは、手際よくヴィオラの髪を結っていく。いつもは比較的幼く見えるように髪型も工夫しているが、今日は違う。
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