たとえ君が・・・
多香子は真っ黒なスーツに身を包み紅葉が進む木々の中を歩いていた。

少し街の中心部から離れたその場所は、慶輔が眠る墓地だった。

毎年、慶輔の命日になると多香子は一人お墓を訪れている。
その左手の薬指にはいつもは部屋に置いてある結婚指輪がはめられている。

花を持ち多香子が墓地につき慶輔のお墓に向かうと、そこには先客がいた。

喪服に身を包む、長身の男。珍しく寝ぐせのたっていない髪のその男は、渉だ。

渉は線香に火をつけ、慶輔が好きだったお酒とお菓子を供え手をあわせる。

長く長く手をあわせている渉が顔をあげてから多香子は歩きだした。

その足音に渉が振り向く。
「ありがとうございます。」
妻として渉に頭を下げる多香子の左手の薬指に指輪が光っているのを渉は見た。
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