かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
思わず小さく声が漏れて、それと同時に視界が影に覆われた。あの夜、初めて長嶺さんに口づけられたときのあの感触が蘇る。温かくて、心地よくて、どうしようもなく胸が締めつけられるようなこの感じ……。

キスしていいか?なんて聞いておきながら返事も待たずに再び唇を奪われた。彼の了承の問いは、もはやなんの意味もなさない。

「や、やめ……」

「やめて欲しいって顔してないけどな」

じっとこちらを見つめる彼の目はすべてを焼き尽くさんばかりの熱を宿しているようで、思わず喉を鳴らしてしまった。自分の意に反してドクンと波打つ胸をなんとか宥めようとするけれど、私の心臓はさらに反抗するみたいに高鳴っていった。

こんなふうに流されちゃいけない。もうやめよう。と訴える理性も吹っ飛びそうになる。すると、ようやくその理性が飛びそうになるギリギリのところでキスが解かれ、今度はぎゅっと抱きしめられた。

「三ヵ月まで俺のほうが平常心を保っていられるか危ういな、早く君を俺のものにしたくてたまらない」

そんなふうに言われたって、私は絶対に好きになんてならない。だから、賭けは私の勝ちだ。そして結婚の話はなかったことにする。と、微かに揺れ動きそうな心に何度も何度もそう言い聞かせる。
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