かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「長嶺さんのこと、よく知ってるんですね」
「よく知ってるも何も腐れ縁というか……オムツの頃からお互い知ってる幼馴染ってやつ? 私の父がパリでツアー会社を経営しててね、彼の家とうちは隣同士だったの。一緒に学校にも行ったし、おままごととかしてよく遊んだわよ~ああ、懐かしい」
恭子さんはクスクスと昔のことを思い出して可愛く笑っている。けれど、私の知らない長嶺さんを彼女が知っていると思うと、水の中に落ちたインクのように黒い何かがじわっと胸に広がっていく感覚を覚えた。
そっか、恭子さんも海外で暮らしてたことがあるって言ってたけど、パリだったんだ。
長嶺さんと幼馴染か……じゃあ、ずっと仲がいいんだね。
やだな、なにこの感じ……。
モヤモヤとした闇の中から醜い自分の姿が見えてハッとする。
それに、長嶺さんがコンサルタントだったなんて、知らなかった。
私が仕事で行き詰っているとき、さりげなくアドバイスしてくれた。今思えば、それは彼のコンサルタントとしての片鱗だったのかもしれない。
「とにかく、まずは売り上げに回復の兆しが見えてきたことだし! 家に帰って祝杯あげるわよっ」
「そ、そうですね。吉報が聞けて私も嬉しいです」
恭子さんの明るい声に、長嶺さんの過去のことを頭の隅に追いやる。
このことは、私の胸の中にしまっておこう。そのときがきたら、きっと長嶺さんの口から聞けるよね。
早く帰って長嶺さんにお店のことを報告しなきゃ!
プロジェクトに導かれ、パティスリー・ハナザワがいい方向へ進み始めてる。それを思うと足取りも軽くなる。私は躍る胸を押さえつつ、事務所を後にした。
「よく知ってるも何も腐れ縁というか……オムツの頃からお互い知ってる幼馴染ってやつ? 私の父がパリでツアー会社を経営しててね、彼の家とうちは隣同士だったの。一緒に学校にも行ったし、おままごととかしてよく遊んだわよ~ああ、懐かしい」
恭子さんはクスクスと昔のことを思い出して可愛く笑っている。けれど、私の知らない長嶺さんを彼女が知っていると思うと、水の中に落ちたインクのように黒い何かがじわっと胸に広がっていく感覚を覚えた。
そっか、恭子さんも海外で暮らしてたことがあるって言ってたけど、パリだったんだ。
長嶺さんと幼馴染か……じゃあ、ずっと仲がいいんだね。
やだな、なにこの感じ……。
モヤモヤとした闇の中から醜い自分の姿が見えてハッとする。
それに、長嶺さんがコンサルタントだったなんて、知らなかった。
私が仕事で行き詰っているとき、さりげなくアドバイスしてくれた。今思えば、それは彼のコンサルタントとしての片鱗だったのかもしれない。
「とにかく、まずは売り上げに回復の兆しが見えてきたことだし! 家に帰って祝杯あげるわよっ」
「そ、そうですね。吉報が聞けて私も嬉しいです」
恭子さんの明るい声に、長嶺さんの過去のことを頭の隅に追いやる。
このことは、私の胸の中にしまっておこう。そのときがきたら、きっと長嶺さんの口から聞けるよね。
早く帰って長嶺さんにお店のことを報告しなきゃ!
プロジェクトに導かれ、パティスリー・ハナザワがいい方向へ進み始めてる。それを思うと足取りも軽くなる。私は躍る胸を押さえつつ、事務所を後にした。