かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
父は名の知れたパティシエだし、私もコンテスト受賞者だ。名前を検索すれば勤務先くらいわかってしまう。だから私は特に驚くことなく無表情で微笑む石野さんの視線から目を反らした。
「実は今夜、ひと足早いクリスマスパーティーをやるんだ。っていうか、もう始まってるけど、どうしても君を誘いたくて迎えに来た」
「クリスマスパーティー?」
寒そうにしている石野さんを見ると、この寒空の下でずっと私を待っていたのだろう。悪いと思いつつも、今はそんなパーティーで楽しむ気分になれない。それに元々大勢が集まって騒ぐ場所は苦手だ。
「あの、せっかくですけど――」
丁重にお断りしようと口を開くと「あっ、そうだ!」と石野さんが私の言葉を遮った。
「長嶺のパリ時代の後輩君たちも来てるよ。君のこと紹介させて欲しいな、たぶん、色んな話が聞けると思うけど?」
意味ありげに言って石野さんがわざとらしく私の顔色を窺う。長嶺さんをエサに私を釣ろうとしているのは明らかだ。そんな誘惑に惑わされてはいけない。それに彼が嘘をついている可能性もある。
「実は今夜、ひと足早いクリスマスパーティーをやるんだ。っていうか、もう始まってるけど、どうしても君を誘いたくて迎えに来た」
「クリスマスパーティー?」
寒そうにしている石野さんを見ると、この寒空の下でずっと私を待っていたのだろう。悪いと思いつつも、今はそんなパーティーで楽しむ気分になれない。それに元々大勢が集まって騒ぐ場所は苦手だ。
「あの、せっかくですけど――」
丁重にお断りしようと口を開くと「あっ、そうだ!」と石野さんが私の言葉を遮った。
「長嶺のパリ時代の後輩君たちも来てるよ。君のこと紹介させて欲しいな、たぶん、色んな話が聞けると思うけど?」
意味ありげに言って石野さんがわざとらしく私の顔色を窺う。長嶺さんをエサに私を釣ろうとしているのは明らかだ。そんな誘惑に惑わされてはいけない。それに彼が嘘をついている可能性もある。