かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
そういえば、私の父も母とはお見合いで、出会って一週間で結婚した。スピード婚だったけど、それなりに母が亡くなるまで仲睦まじくやっていた。そう考えると……。

いやいやいや! 私は私! 流されちゃだめ!

長嶺さんは申し分ないくらいかっこよくて素敵な人だと思う。見た目だけは。おまけに大企業の御曹司ときている。こんな好物件の相手、もしかしたらほかにいないかもしれない。けど、うまい話には必ず裏がある……。

もう何がなんだかわからない。やけくそになって「あー! わかりましたよ! 結婚すればいいんですよね!」なんて勢いで言える勇気もない。すると。

「うーん、そうだな……三ヵ月待とう」

「え?」

「俺のことを何も知らないから躊躇しているんだろ? 賭けに勝ったからと言って、横暴に出るつもりはない。父上を亡くされて、新しい環境に馴染むのもひと苦労な上に結婚なんて言われても困るのはわかる」

なにか譲歩の手立てがあるなら、それに縋り付きたい一心だった。私が顔をあげて長嶺さんを見ると、彼は形のいい唇を三日月に曲げた。

「三ヵ月、籍を入れるのを待とう。その間、俺とお試し婚をしてもらう」

お試し……婚?

目が点になっている私に、長嶺さんが話を続ける。

「今日から俺と君は仮の夫婦だ。その三ヵ月の間に俺という男を知ればいい、だろ?」

だろ? って言われても……仮の夫婦? なによそれ……。

ドラマチックな恋の幕開けは、ある日突然訪れる……なんて、恋愛小説の中だけの話だ。長嶺さんとの出会いがもしそうだとしても……何か違う気がする。

三ヵ月経ったところで私が長嶺さんを好きになる保証はない。そこで私はひとつの考えがひらめいた。

「三ヵ月ですね? わかりました」

「わかってもらえて嬉しいよ」

すんなりその申し出を受け入れると長嶺さんは満足げに頷いた。そんな彼に、ゴクッと小さく息を呑んで私はそのひらめいた考えを口にした。
< 34 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop