かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
数日後。

「お疲れ様です。お忙しいところすみません、営業時間外のほうがいいかと思って……。プロジェクトの簡単な概要ができました」

「あ、芽衣さん。お疲れ様」

忙しいと時間が経つのはあっという間だ。私は閉店後、事務所で恭子さんと出来上がった草案について話し合おうと、パティスリー・ハナザワへ足を運びやってきた。

「ちょうどよかった。これ、見てくれる?」

パソコンに向き合っていた恭子さんが画面を私に向ける。パソコンの画面を覗き込むと、今月の売り上げが棒線グラフになって示されていた。私はとある違和感を覚え、ドキリとする。

「あの、恭子さん……このデータ」

「芽衣さんも気づいた?」

恭子さんはデスクに頬杖をついて、はぁ、と盛大にため息をついた。

「先代が亡くなったことがメディアで公になってからというもの、急にガクッと売り上げが落ちてるの。スタッフ不足で欠品が多く続いてるのも売り上げが落ちてる原因に拍車をかけてる。やっぱり求人広告増やしたほうがいいかなぁ……」

父が亡くなってからまだ一ヵ月と経っていない。けれど、パティシエ界の巨匠と言われていた父、花澤翔一が急逝した打撃は如実に表れていた。先月まで順調だった売り上げが、急激に右肩下がりになっている。
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