かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
――芽衣、女ならちゃんと料理もできるようにならないとダメだぞ? 自分の旦那に三食カップラーメンを食わせる気か?

――大丈夫だって、そのうち自然と覚えるから。

なんて父に言っておきながら、実際に料理に興味を持つことなくこの年まできてしまった。

私は料理に対してどうしても理解できないことがあった。目分量だとか、さっと湯通しとか、キツネ色とか塩コショウを少々とか、全くもって私にはその感覚がわからないのだ。作り手任せの感覚なんて人それぞれだし、一瞬だけ料理教室に通ったこともあったけど言われた通りにやったのに、そのとき出来上がったのは丸焦げのハンバーグだった。

とにかく、キッチンであたふたしながら料理しているところなんて見られたくない。

私はスマホで焼きそばのつくり方を検索し、手を洗ってからまずは麺を流水で洗う。

しばらくキッチンを使って気づいたことがある。シンクや台のすぐ後ろには食器棚があり、足元の扉を開けるとゴミ箱になっていた。すぐに手が届くところに冷蔵庫、そして近くまで行かなくても中の様子が分かる場所にオーブンがあった。すべてスムーズに無駄な動きはしなくてもいいような動線になっていた。この配置は、きっと長嶺さんが料理をしやすいように作られたものだ。
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