かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
もう見ただけで救いようのない状態だというのに、顔をあげると優しく長嶺さんが微笑んで私の湿った目尻を親指で拭った。

「ほかになにを買ってきたんだ?」

「実は富士宮風焼きそばにしたくて……あとは卵があります」

スーパーの袋から卵が一ダース入ったパックを取り出して長嶺さんに手渡す。彼はなにかアイディアを思いついたみたいでシンクで手を洗うと卵を割り、菜箸で手早くかき混ぜ始めた。そして再びフライパンに火をつけ、塊になった麺を満遍なく広げてほぐしていく。一体どんなものに変身するのか見当もつかない。

「これだけ麺が水気を吸ってるとブチブチ切れて、返って溶き卵がよく混ざるな」

彼は笑っているけれど、仕事で疲れているだろうにこんなことをさせて申し訳なさが募る。

「私、どうして失敗したんでしょうか……」

色々と原因はあるものの、自分ではちゃんとレシピに沿ったつもりだった。

「失敗の原因は水気だな。麺を洗ってそのままフライパンに入れただろ? 具がちょっと焦げてるのを見ると、慌ててそこでまた水を足したな?」

ずごい……。

まるで私が作っていたのを最初から見ていたみたいに長嶺さんから指摘される。
< 97 / 220 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop