かりそめ婚ですが、一夜を共にしたら旦那様の愛妻欲が止まりません
「んー! 美味しいです」

「うまいか? ならよかった。まぁ、ただ溶き卵で閉じただけなんだけどな」

「それだけでこんなにも変わっちゃうなんて、すごいです」

私もお腹が空いていて、お好み焼きはあっという間になくなってしまった。

なんだか久しぶりにこうして長嶺さんと部屋にふたり……な気がする。

ドキドキとしている自分を誤魔化そうと、お皿を片付けるもそれもすぐに終えてしまう。

「ごちそうさまでした」

「こちらこそ、ごちそうさま。ゆっくりしようか、ここに座りな」

長嶺さんに促され、私は再びカウチに座る彼の隣にちょこんと腰を下ろした。

「失敗作を目の前にして悔しそうにしてる君の顔、なかなかよかったぞ」

「もう、どういう意味ですかそれ」

自分でできると思っていたことができなかったときほど悔しくて、恥ずかしいと思うことはない。

ムッとする私に長嶺さんは小さく笑うと、膝の上でぎゅっとしている手を握られた。

「そんな君も……可愛いって意味だ」

「か、可愛いって……からかわないでください」

揶揄混じりでも、優しい声音で囁かれると妙な気分になる。次第に空気が甘いものに変わってくる気配を感じてなんだかそわそわ落ち着かない。そのせいか、私の反抗的な言葉も小さく語尾がすぼまり気味になる。
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