愛は、つらぬく主義につき。 ~2
できたら、もうこの場所に根っこ生やして居座りたいくらいなのを。涙を飲んで次に移って。
相澤さん以外は正直、テキトーに受け流して愛想笑い振りまいて終わり。

遊佐の隣りに戻ると、またイジワルな顔。

「相澤代理のマエとアトじゃ、別人だねオマエ」

やっぱり見られてた!
たまには。澄ましガオでお返し。

「あんたにヤキモチ妬かせたくてやってんだけど?」

「妬きすぎて腹んナカ真っ黒だわ」

キレイな悪魔がほくそ笑んでる。

「どうしてくれんの、口から火ィ吐けそーなんだけど」

言いながら、あたしの後ろ頭を捕まえて軽いキス。離れてもう一回。
目が合ったら止まらなくなりかけて。
向かい側から、おばあちゃんの咳払いに寸止めされた。

「・・・宮子。瑤子さんに、あとは多恵(たえ)さんに任せて戻るように伝えておいでなさい」

「あ、はぁい」

お料理は、仕出しの折り詰めを各席に一人前ずつ、あとは刺身の盛り合わせや、おばあちゃんの煮しめ、取り寄せた押し寿司なんかが大皿で並んでる。
お酒や箸の進み具合を見計らって、お手伝い(がしら)の多恵さんに追加を指示するのに、ママは座敷と厨房を行ったり来たりだった。

「返事はしゃんとなさい」

「はい、おばあちゃん」

姿勢を正して、着物の裾に気を付けながら立ち上がる。

「じゃあオレもトイレ」

イスからならまだ楽でも、段差のない平面から体を起こすのは自力じゃ難しい遊佐。
あたしは部屋の隅に立てかけてあった松葉杖を取ってくると。座椅子からお尻を引きずり、離れた畳のうえに移動してた遊佐の手助け。

あたしの肩を掴んだ片手に体重をかけ、遊佐は動く方の左脚の筋肉と体幹で、最大限の力を振り絞って立つ。
指先に籠もった強さと、受け止めた重さは。あんたが自由になんでも出来る証だって、あたしは思うの。意思が伝わってその通りに動く残りの脚が、腕が、頭が。ちゃんとあるんだから。
なにも欠けてなんかない。なにも終わってなんか、ない。
『大事にしろ』って言いながら遊佐を憐れんでる連中に、そう叫びたくなる。ときどき。


「サンキュ、宮子」

オレは気にしてないって。今みたいにきっと、あんたは素直に笑うんだろうけど。



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