愛は、つらぬく主義につき。 ~2
3-1
「5月の第3日曜? あら良かったじゃない、チヨちゃん! 一杯おごるわ~」

あっという間にお正月休みも終わり。まだどっか新年ムードが抜けきらないまま、日常が回帰しつつある頃。仕事終わりに亞莉栖に顔を出して、新年の挨拶がてらユキちゃんに結婚式の日取りが決まった報告をしたあたし。

「もうリハーサル済みだし、本番はラクでいいんじゃない?」

片目を瞑って悪戯っぽく言うユキちゃん。

「新年会でシノブさんにも言われた、お金のかかるリハーサルに呼ぶなって」

思わず苦笑いで返すと、「らしいわねぇ」ってちょっと呆れ顔で笑い。

「なんにせよ、これでやっとマコトちゃんと一緒になれるんだから。アタシも嬉しいわ」

ずっとあたし達を見守ってきてくれた人の言葉だからこそ、あったかく胸に染みてくる。

「今度はユキちゃんも来てね!」

「もちろんよ」

包み込んでくれるみたいな笑顔がちょっと目にも染みた。


「そう言えばさ、ユキちゃん」

シノブさんの話題でふと思い出し、オレンジジュースを一口飲んでから何とはなしに訊ねた。

「もしかして藤さんてシノブさんと仲いい?」

「高雄? どうだったかしらねぇ」

にっこり笑って見せたけど答えは曖昧。それ以上なにも言わないときは。『ふれるな』のNGサインだ。

いくらユキちゃんとあたしの仲でも、暗黙のルールは存在する。情報屋として明かせないことだってあるだろうし、一歩踏み間違えたらカンケイが崩れ落ちることだってある。

「そっかー。新年会に来ててね、なんかそんな口ぶりだったから。・・・あ、それよりもっと気になる人に会ったし」

さり気なく話を切り替えて、あたしは小さく溜息を混ぜる。
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