溺愛なんてされるものじゃありません
「それでさっきの話だけど、俺の何がいけないのだろうか。」

主任は一回ため息を吐いた。話をして分かった事だけど、クールそうな外見とは違い、割とお喋りだし話しやすい人だ。そしてそんな主任には悩みがある。

その悩みとは『彼女が出来ない』という事らしい。

その話を聞いた時は聞き間違いかと思い、3回くらい聞き返した。でも聞き間違いではなかった。

何の冗談かと思いきやこのイケメン主任は本気で悩んでいる。その気になればすぐに彼女の1人や2人できるでしょ?と言ってみたが、彼女なんてそう簡単には出来ないだろうと一喝された。

「主任には完璧過ぎるイメージがあるから、女性は敬遠するのかもしれませんね。実は庶民ですよって言ってみたらどうですか?」

「社長御曹司とかタワーマンションの最上階に住んでいるとかだろ?そんなのとっくに否定したさ。でも、またまた謙遜(けんそん)しちゃって…とか言われて信用してくれないんだ。」

「あー…何か全身から高貴なオーラが出てますもんね。」

そう言いながら私はすき焼きに箸を伸ばす。

「その意味不明な高貴なオーラって何だ!?女性にモテたいとか贅沢は言わない。1人でいい。1人でいいから俺の事を普通に見て欲しい。」

いやいやめっちゃモテてますよーと言いかけたけど、話が面倒になってきたので言うのをやめた。

「そういや社長令嬢と結婚するって話もありますけど。」

「そんな訳ないだろう?庶民の俺がどうやって社長令嬢と知り合うんだ。あー、なんでこんなに俺のデマ情報が流れているんだ。嫌われているのか、俺。」

主任は頭を抱え始める。イケメンが悶絶する様子を見て私は、主任ってなかなか面白い人だと心の中で思った。

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