溺愛なんてされるものじゃありません
「赤崎、俺に足りないものは何だ?世の中の女性は男に何を求めているんだ?」

そんな事聞かれてもなんて分からないし、そもそも主任は完璧過ぎるし、私ごときがアドバイスなんて恐れ多いわ。

私の思いとは裏腹に、主任はじぃっと私の顔を見て答えを求めている。

「…あーえっと、何ですかね?そう言えば男性に溺愛される恋愛小説とか好きな女性多いみたいですよ。」

困った私の苦肉の答えを主任から視線を逸らし気味に言うと、主任はなるほどというような表情をした。

「溺愛か…溺愛ねぇ…溺愛ってどうしたらいいんだ?」

主任は真面目な顔して質問してくる。

「それは…自分で考えて下さい。」

私はそう言って立ち上がり、食べ終わった食器をキッチンへ運ぶ。食べるだけ食べて帰るのは失礼かと思い、後片付けはちゃんとして帰るようにしている。

「じゃあ帰りますね。ご馳走さまでした。」

後片付けも終わり、私は玄関で靴を履く。

「気をつけて帰れよ。」

隣に帰るだけなのに、主任はいつも見送ってくれる。本当に真面目な人だなぁ。

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