溺愛なんてされるものじゃありません
仕事が終わり、私と裕香そして同じ庶務課の女子2人の計4人で待ち合わせしている居酒屋へ向かう。

「あっ、こっちだよ。」

店内は仕事終わりの大人達で大賑わいだ。中に入ってキョロキョロすると男性社員達の姿があった。

「ごめんなさい。お待たせしました。」

私は1番後ろからひょこっと顔を出し男性社員達の顔を見る。

な、何で!?

私以外の庶務課女子達はめっちゃテンション上がっている。男性社員の中に平国主任がいるではないか。

私は主任と目を合わさないようにしながら男性社員達の前に座る。

「急に誘っちゃってゴメンね。じゃあ乾杯の前に軽く自己紹介しちゃおうかな。まずは…こちらはみんな知っていると思うけど、我ら営業企画課エースの平国 蓮主任でーす。」

ただの自己紹介で大盛り上がりしている。男性社員達の正体は営業企画課の人達だったんだ。ちゃんと確認しておくべきだった。っていうか、なんか合コンみたいになってるし。

「ほら美織、アンタの番だよ。」

「え?あ…どうも赤崎 美織26歳です。」

いつのまにか順番が回ってきて作った笑顔で慌てて自己紹介をする。色々考えてしまって他の人の話聞いてなかったけど、まぁいいか。

自己紹介も終わり、ビールを片手にみんなで乾杯する。そしてそれぞれ色々な話をして少し時間が経つと、席がシャッフルされた。

「偶然だな。」

私の隣に平国主任が座る。

「本当に偶然ですね。」

私達が知り合いとバレないように小声で話す。

「赤崎、いつもと雰囲気違う気がする。」

「あー、外見ですか?流石の私でも会社に行く時はきちんと化粧して髪型も変えますよ。」

確かに主任は、普段家にいる時の干物系女子の私しか知らないから違和感があるのかも。

「なんか可愛いな。」

「へ?何がですか?」

「赤崎がだよ。」

まさかこんな人前で溺愛の練習ですか!?私は微笑んでいる主任の前で顔を赤くなった。

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