ボクソラ☆クロニクル

「分からないことは全部ワクワクする。その中でも僕は1番、魔風石が何であるのかが気になって仕方ない。飛行船はもちろん美しいものだけれどその根源にある魔風石にも心は引かれるんだ。だっておかしいだろ? 風邪って言うのは単なる空気の流れでしかない。その中でどうして鉱物が発生する? どうしてその中に風が閉じ込められている? 分からない。だから面白い」

 私はあまり関心も持てないけれど、きっとそこにルドルフさんのワクワクが詰まってるんだ。
 瞳が輝く。
 声が弾む。

「この世界の何もかもが分かっちゃったら面白くない。分からないから、世界はこんなにも面白いんだ」
「……素敵ですね」

 そのワクワクに共感することは出来なかったけど、そんな彼が眩しく見えた。

「お前……――ッ!!」

 ハッと我に返ると、ルドルフさんは視線を逸らし、首の後ろをポリポリと搔いた。

「ま、まあ!! こんなこと話しても? 君には理解出来ないだろうけど?」
「はい。申し訳ないですが確かにピンと来ないです……」
「そうだろうね! 良いんだよ。こんなこと言ってる僕が変なんだから」
「変じゃないですよ。自分にとってワクワクするものを追いかける気持ちが変なはずがないじゃないですか」

 田舎でぼんやりと過ごしていた私にはなかなか理解しきれないけれど、それはとても素敵なことなんだと思う。

「……て、ごめんなさい! また知ったような口を聞いてしまって」
「……別に。と、とにかく点検は終わり。異常もなし」

 そう言うとルドルフさんは慣れた手つきでテキパキと道具を片付けていった。

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