ボクソラ☆クロニクル


「……ニーナは、親父さんのことを好いているんだな」
「はい。身寄りがなかったボクを男でひとつで育ててくれた、大事なお父さんです」
「なんだ。君と親父さんに血縁はないのか」
「あ、はい。ボクも詳しいことは分からないんですけど。身寄りもなく捨てられていた、まだ小さかったボクをお父さんが拾って育ててくれたそうなんです。血の繋がりはないですけど、あんまり気にしたこともありません。ボクにとってお父さんは、お父さんだけなので」
「そうか……。君は幸せだな」

 その言葉が少しだけ胸の中に引っかかった。

「カルロスさんは、親御さんと仲が良くないんですか?」
「俺の父親は空賊、母親は娼婦だった。仲が良いとか悪いとか、そういうレベルの話でもなくてな。スラム街で野良犬みてぇに暮らしていたよ」

 掃き溜めの中で、ゴミのような幼少期を過ごしていたのだとカルロスさんは語った。

「そんな中で、レオンに出会った。初めは気に食わねぇ野郎でな。何回か気を失うまで、ぶちのめしたんだが……」

 カルロスさんって穏やかそうに見えて結構過激なのかな。そう言えば昨日の朝ごはんの時にも結構口調が荒れてた気が無きにしも非ず……。


「レオンって、変な野郎だろ」
「あ、はい。あ、いいえ」
「……どっちだよ」

 私の妙ちくりんな回答にカルロスさんはクスリと笑みをこぼす。

「ボクにはろくに空賊って人たちと関わった経験がないので、そもそもの母数がないんですけど。でも、レオンさんは空賊って人たちのイメージとはちょっとズレてるような気がします」

 キラキラしていて、真っ直ぐで。
 まとう空気は、とても綺麗な気がした。

「そういう奴なんだよ、うちの船長は」

 カルロスさんは、そもそも自分は空賊になるつもりはなかったのだと言った。
 娼婦だったお母さんと、空賊でそのお客さんだったお父さん。ご両親に対してあまりいい感情を持っておらず、だからこそ空賊にはなりたくなかったそうだ。
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