【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍


 それから二日後。

 エルシーとアーネストは王都にまだ戻っておらず、セルウィン公爵家の領主屋敷に留まっていた。

 原因は、アーネストの静養である。オーモンド氏と話をしたその日の夜、屋敷に戻ったアーネストはそのまま寝込んでしまったのだ。エルシーは心配のあまり、心臓が止まりそうになったが、久しぶりに使った魔力の放出が原因とのことだった。家令によると、アーネストが風の魔力を最後に使ったのはもう十年以上前になるという。本来なら、魔力保持者は専属の教育を受けるが、アーネストはそれを放棄し、あえて騎士の道を選んだ。しかし、身体の芯にある力そのものはずっと潜在し続けていて、今回はそれを無理やり叩き起こすように使ったため、身体に影響を及ぼすのは必然だという。

 エルシーは毎日アーネストの世話を買って出たが、しばらく静養すれば元通り元気になると聞いて、ホッと胸を撫で下ろした。

 その間、オーモンド邸には調査団が入り、行方不明になった三人の子供も地下室から無事に見つかった。ヴィンスは親から引き継いだ事業が順調に進むうちに慢心して、新しい仕事に手をつけたが、畑違いの分野であることが災いし、借金を重ねるようになった。それで、ケレット夫妻に近づき子供を斡旋し、見返りとして多額の資金を得るようになった。さらに調べによると、エルシーの母の宝石を盗むよう使用人のロブをそそのかしたのもヴィンスだと判明した。

三人の子供は、またどこかに〝需要〟がありそうな場所へ送ろうと、ヴィンスは計画を立てていたようだ。しかし、その証言により国外の人身売買の商人が絡んでいる疑惑が浮上。国を挙げての大捜査が水面下で始まっている。

 アーネストも巻き込まれた当事者の一員として、今すぐ捜査隊に加わりたかったが、何せ力の反動で、自分の意思とは関係なく、突然睡魔が襲ってくるのである。この調子では到底職務にも戻れない。
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