【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
ティアナ王女は少しだけ前に進み出ると、小声で挨拶をし、ドレスをつまんで膝を折った。そのドレスも、どちらかというと身体のラインを強調しないゆったりとしたデザインのもので、黄と白の中間のようなはっきりしない色だった。肌の露出は少なく、おまけに飾り気もない。

 ローランザム王国は海に面し、他国との貿易も盛んな国だ。このアシュクライン王国と比べて半分ほどの領地だが、それでも国は豊かで財源も潤っているはず。それなのに、その国の王族である彼女の質素な身なりは、アーネストの目にとても不自然に映った。


 一方、エルシーは渦中の王女に思いを寄せるうち、気持ちが少し前向きに動き始めていた。人に頼りにされるのは、とても光栄なこと。それ以上に、誰かの役に立てるなら、もっと嬉しい。

 結婚してから、エルシーは仕える側ではなく、誰かに尽くされる立場になった。屋敷の中でつい侍女の仕事を手伝おうとしても、「とんでもございません、奥様」とやんわりと断られる。それが正しいあり方だと理解していても、どこか違うと感じている自分がいる。そして気づいたのだった。自分はいつの間にか働くことが好きになっていたという事実に。

「……陛下のお話を聞いた上で、もちろんアーネスト様がよろしければ、ですけれど……そのお話、お受けする方向で考えてみてもいいでしょうか?」

「俺は君の意志を尊重する。ただし無理はするなよ」

 はい、と微笑むエルシーを、アーネストはそっと抱き寄せた。
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