かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 しみじみと眺めていると、着付けをしてくれた店主が「胸中察するよ」と言いたそうに微笑ましい目を向けてきた。

「いいと思う」

 店主の手前、素直に「可愛い」「似合っている」と言えない意気地のなさに嫌気がさす。

 だけど小毬は笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。

「将生も浴衣似合ってるよ」

 そして満面の笑みで褒められ、「おう」なんてぶっきらぼうな返事しかできなくなる。

 ますます微笑ましい目で俺を見る店主に耐えられなくなり、貴重品以外の荷物を預けて店を出た。

 さすがGW。先ほどより観光客で賑わっていて、人通りが多い。

 浴衣姿見たさにレンタルしたが、間違いだったかもしれない。小毬は慣れない下駄に、足元がおぼつかない。

「大丈夫か、小毬」

 心配で手を取ると、みるみるうちに小毬の頬は赤く染まった。

「悪いっ」

 すぐに手を離したものの、頭を抱える。

 触れないと約束したのに、さっそく破ってどうするんだ。明日までずっと警戒されるんじゃないか?

 そんな心配が頭をよぎった時、強く手を握られた。

「――え」

 びっくりして彼女を見ると、耳まで赤くなっていた。そして忙しなく目を泳がせながら言う。

「悪くないよ。……歩きづらかったから、こうして手を繋いでくれたら助かる」

「小毬……」

 あぁ、本当に小毬はどこまで可愛いのだろうか。
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