かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 そっと抱き抱えて寝室へと向かい、ベッドに下ろした。布団を掛けてそのまま彼女に寄り添う。

 小毬の寝顔を見つめながら、どうしても頭をよぎるのは洋太のこと。

 なにか理由があって沢渡さんは、洋太に別れを切り出したのだと信じたい。人の気持ちは変わるものだが、変わらない気持ちもあるはず。

 あのふたりは、なにがあっても離れないと思っていたのに……。

「俺たちは、大丈夫だよな……?」

 小毬の気持ちを信じようと決めたが、洋太と沢渡さんの話を聞き不安になる。

 俺だって洋太と同じ気持ちだ。小毬を失ったら生きていける自信がない。

「小毬だけは、絶対に失いたくない」

 彼女の左手薬指にはめられている指輪を、そっと指で撫でた。

 こんな形だけの縛りだけじゃ足りない。小毬の心すべてがほしい。

「お願いだから、早く俺を好きになって」

 小毬の手を強く握り、気づいたら俺も深い眠りに落ちていた。
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