かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 瞬きさえできず、真意を探るようにジッと見つめていると彼は目を細めた。

「大丈夫、絶対痛くしないから」

「えっ? ――っんっ」

 掠れた声で囁くと、早急に唇を塞がれた。

 お互い大嫌いなのに、キスを何度も交わしてきた。決まって彼は「これは義務だから」と言って。
 じゃあこの甘く痺れるようなキスも義務なの?

 いつもの触れるだけのキスじゃない。角度を変えて何度も落とされ、時には唇を食まれ……。ペロリと舐められた瞬間、甘い声を漏らせば彼の舌が割って入ってきた。

 逃げても捕らえられて絡めとられ、甘く口内を犯されていく。

 義務ならこんな全力で愛されているような……そんな勘違いをしそうになるキスをしないでほしい。

 キスだけでトロトロに融かされ、唇が離れる頃にはすっかり私の息は上がっていた。
 満足そうに私を見下ろす姿にドキッとしてしまう。

 さっきまで交わしたキスを思い出すと恥ずかしくて、顔を横に向けた。

 すると首元に顔を埋めた彼の髪がかかり、くすぐったくて身をよじってしまう。

 彼氏がいる友達から、初めては痛くてつらいだけしかないって聞かされていた。

 だけど彼とこういう関係になるのは、避けては通れない道。だから痛みに耐え抜く覚悟を決めてきたのに……。

「あっ……、待って」

「なに? 痛いの?」

 違う、全然痛くない。ただずっと与えられている甘い刺激に怖くなっただけ。
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