かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 私の地肌を滑る指も、触れる手も優しくて、感じる吐息は熱くてこっちまでおかしくなる。

「正直に言って」

 命令口調なのに、優しくこめかみや頬に次々とキスが落とされる。

「違うの。……痛くなんてない。変になりそうで怖いの」

 素直になりたくないのに、本音が口をついて出てしまう。
 すると彼は目を丸くさせた後、昔のようにふわりと笑った。

「いいよ、変になって。……変になった姿を見せてよ」

「そんなっ……」

 荒々しく唇を塞がれ、言葉はキスと共に飲み込んだ。

 こんなの、聞いていた話と違う。……そもそもどうして彼は、こんなに優しく大切に私を抱くのだろうか。

 キスと同じようにこの行為も義務なら、いっそひどくしてほしい。

 一生忘れられないような痛みを残してほしかった。そうすれば自由をすべて奪われた人生の恨みを、すべてぶつけることができるのに。

 優しくされたら、嫌でも勘違いしてしまいそうになる。私は彼に愛されていると。
 そんなこと、絶対にあり得ないのに……。

 与えられるぬくもりは甘いのに、心の中はつらくて苦しい。
 私の初めては、苦くて甘い感情を身体と心に覚えさせた。
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