かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 今日まで山浦さんにたくさんのことを教えてもらった。どこまで力になれるかわからないけれど、自分にできる最大限の仕事をしたいと思っている。

 一人前、三万円もするすき焼きを堪能しながら、誠司君は日本酒を注文し、一時間も過ぎるとすっかりほろ酔い状態。

「ねぇねぇ、小毬。将生とはどう? うまくいってるの?」

 ニコニコしながら聞いてきた誠司君に、タジタジになる。

 昔から思っていたけど、誠司君は本当に将生のことが大好きだよね。可愛くて仕方がないってヒシヒシと伝わってくる。

「それにしてもすごいよね、小さい頃から仲が良いとは思っていたけど、まさか本当に結婚しちゃうなんて。……正直、小毬たちの結婚話は、父さんたちのおふざけで終わると思っていたんだ」

 そっか、誠司君は私たちが本当に結婚するとは思わなかったんだ。

「羨ましいよ、それほど好きになれる人と出会えるなんて」

 心底羨ましそうにため息交じりに言う。

 そういえば誠司君はいまだに独身。恋人がいるとも聞いたことがない。

 ふと疑問に思い、聞いてみようかなと悩んでいると、山浦さんが口を開いた。
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