かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「小毬?」

「ごめん、本当に嬉しくて」

 困惑する将生を安心させるように、涙を拭って笑顔で伝えた。

「ありがとう将生。大切に毎日使わせてもらうね。……今日は本当にありがとう」

 感謝の想いを口にすると、将生はふわりと笑った。

「よかった、喜んでもらえて。……さっきのケーキもだけど俺、小毬が笑ったり喜んだりしてくれるとすごく嬉しいんだ。万年筆は寝る前に渡そうと思っていたんだけど、もっと小毬の笑った顔が見たくて我慢できなかった」

 そうだったんだ、だから急に部屋から出ていっちゃったんだ。

 将生はこんなにいろいろ考えてくれたのに、私は将生が会社を設立した時、なにもしなかった。誕生日は毎年なにかプレゼントしていたけれど、ほとんど義務的な気持ちだった。

 これまでのことを思い出すと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「小毬にはずっと幸せそうに笑っていてほしい。……俺の隣で」

「将生……」

 彼の愛情をひしひしと感じ、胸がギューッと締めつけられる。だからこそ私の気持ちも伝えたい。

「あのね、将生」

「ん?」

 甘い声で言う彼に、思い切って打ち明けた。

「私ね、あの……誰かを好きになる感情がどんなものなのか、わからないの」

「――え」

 将生は大きく目を見開いて驚いている。

 私のことを好きだと言ってくれた将生に、正直に話すのはどうなのかと思うけれど、たとえ彼を傷つけるとしても伝えたい。
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