君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
「あ、昨日はカラコンしてた。
だってさー、夏休み明け初日でやる気無かったもん。少しでも気合い入れたくて」
「へえ…女の子らしい気合いの入れ方だ!」
「貴哉くんだって、カラコンとかメイクすれば、それはそれで画になりそうじゃん」
「…あろうことか、お母さんの職業柄、コスメは家に沢山あるから、簡単に必要な物揃っちゃうんだけど」
「何それ、めっちゃ羨ましい!!」
目をキラキラさせてくる。
世のモテ男子達は、こういうの聞いたら、チャンスだとばかりに、「だったら、うち来る?」とか言うんだろうけど。
さすがに、無理…。そんな勇気、無い…。
「あ、でも貴哉くん…そのまんまが1番カッコイイと思う」
「んえっ」
え?って、言ったつもりだったんだけどなぁ。
変な声が出てしまった。
恐らく、俺がメイクしてる様を思い浮かべながら言ってるんだろう。
考え事をしてる顔のままだから、照れる様子も無い。
「私の独断と偏見だけど…そのまんまの貴哉くんの方が好きかな」
好き…好きと来たか…!!
「え…え…?何で酸欠の金魚みたいになってるの…?」
俺そんなに口パクパクさせてないんですけど!
「好き、とか…言われ慣れてない!」
「何を仰いますの。全国民から愛されてそうなのに」
「仮にそうだとして…そんな普通のトーンで、好きって言ってくる同年代、なかなかいないよ?」
そう返すと、あぁ…と目を伏せる飛鳥ちゃん。
「前に佐倉にも、同じようなこと言われたなぁ…」
佐倉くんに対する“好き”と、俺に対する“好き”は…一緒ってことかな?
何だか、複雑な気持ちになった。