君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。


そんなHRの後。…そんな、って何だ?

HR中に配られたプリントで指を切ってしまったため、絆創膏を貰いに保健室に行った。

ああ…いつもなら絆創膏の1枚や2枚、普通に持ち歩いてるのに。
こないだ使って、うっかり補充忘れたなー。

普段から凜や知愛と一緒に帰ることはなく、HRが終わってすぐに教室を後にした私は、1人で帰ろうとエントランスをプラプラしていたのだけど。

特に理由も無く2階を見上げる。
1階と2階は吹抜けの空間で、ここから2階の人がある程度見えるのだけど。


「んっ?」


私は思わず声を上げた。

佐倉がスタスタ歩いてきて、ベンチに腰掛け、イヤホンをして動画を観ているではないか…!

…え、何で?私は興味本位で佐倉の元に行った。


「佐ー倉っ!」

「あ…ああ」


イヤホン越しでも容易に聞こえるレベルの声が出たらしい。

佐倉の右側に腰を下ろし、画面を見る。
私と佐倉の唯一同じ好みであるバンドのMVのようだ。

…あれ?これは記憶無いな。


「あ、新曲のMV公開、今日だったね! 」


佐倉は左耳のイヤホンを外しながらコクリと頷いた。


「…一緒に観る?」


彼は軽くイヤホンを拭ってから差し出してきた。
変な所几帳面だよな、佐倉。


「うん、ありがと」


私はイヤホンを受け取り、2人仲良くMVを試聴する。佐倉は、私も観やすいようにと携帯をこちらに寄せてくれる。

…って!カップルかっ!

とか少し思いつつ、でもまあ佐倉だしなぁ…と、純粋にMVを楽しむっていう。


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