君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
4分くらい、黙って観ていて。
「いいねぇ…めっさカッコイイ」
「俺、個人的にはサビの所の…」
「シンバルの入れ方でしょ!あれ私も良いなって思ってた!」
「そう、それ」
しばらく感想を言い合った後、他の曲のことまで話し出す。
…なかなかここまで、佐倉と趣味のことで話せることってないんだよね。なんか新鮮。
「ねえ、そういや何でこんな所で?」
「あ?」
「帰りの電車で観るとか、そういう概念無かった感じ?」
そう聞いていると、私がしていたイヤホンを、半ば無理矢理取りながら
「いや…元々妹尾んとこ誘うつもりだったから」
と、いつもの淡々としたトーンで答えてきた。
今度はイヤホンを8の字巻きしてまとめて。
「そしたら妹尾、すぐに教室後にするから、ああ急いでんのか…って思ったんだけど。
何となく様子見てたら、保健室行くんだなーって分かって」
観察力凄いんだけど。
「でもだからってLINEしてわざわざ呼び寄せることでもないよなーって思って。
気付かれたらラッキー、くらいでウロウロしてた」
「そしたらラッキー、私に見つかった」
「まあ、そんなとこ」
「やってること、ただのかまちょなんだけどね」
いつもより冷たいくらいの目を向けてくるけど。
「そろそろ帰ろっか」
「そうだな」
それからいつものように2人で帰るのでした。
ちゃんちゃんっ!