君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
翌日。英表I終わり。
廊下を歩いていると、偶然佐倉くんの後ろ姿を見かける。
昨日はよくも見せつけてくれたなっ!
…ちょっと、八つ当たりが過ぎる。
「佐倉くん!」
呼んでからハッとした。
いやいや、何をしてるんだ?
どうもっ、自分の行動が訳分からない十羽貴哉でございます…。
「…あ、妹尾の」
佐倉くんも佐倉くんで、俺の声に気付いて振り返っちゃうし…。
まあ、ここまで来たら世間話でもしますかな、ということで佐倉くんの方へ近付く。
何となく微妙な距離を保ちながら。
「…妹尾のって、何ですかっ!」
「妹尾飛鳥。いつも一緒にいる後輩の、貴哉だろ」
「飛鳥ちゃんの苗字くらい分かってます…。てか、俺の名前知っててくれてるんですね!」
「苗字知らんし…。妹尾がいつも、貴哉くん貴哉くん言ってっから、自然と覚えた」
そんなに俺のこと、話してくれてるんだ…。なんか感動。
「何そんなに嬉しそうなの」
「え?」
「俺に名前覚えられてて、そんな嬉しそうにする?」
「そっちじゃないです。
飛鳥ちゃんが僕のいない所で僕の話をしてくれてるんだー!って方です」
「ガチレスすんな」
飛鳥ちゃんが、よく分かんない人って形容する所以は、こういう所なんだろうな。