君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。


数II終わりに、なりゆきで一緒にいるのは危険だな。さっさと教室を後にしないといけない。

分かんない…分かんないけど…凜と知愛からしたら面白くないことを聞いたのかもしれない。

佐倉のノリは、慣れれば面白いけど…真に受けるとよろしくない解釈になることがある。

それに、人間の脳なんて単純だ。頭に残った情報で、勝手に都合良く改変してしまう。

物理室に着くと、貴哉くんが手を振ってくる。


「飛鳥ちゃんー!」

「んっ」


私も軽く振り返して、彼の横に座る。


「来てくれたんだ」

「うん、ご飯食べ終わった所だったから」

「そっかそっか!」


貴哉くんは、まだ弁当を広げて唐揚げを頬張ってる。ああ、佐倉と話してたから遅いのか。


「…えっと、唐揚げ欲しい感じ?」


貴哉くんは微笑みながら…というか若干の苦笑いを浮かべながらそう言ってきた。

これは、何となく弁当を眺めていた私が悪い。


「もーう!私どんだけ食い意地張った女認定されてるの!夏祭りの時といいー」

「そんな認定してないけどさ…凄い見てくるなぁって。お母さん手作りの唐揚げ、美味しいよ?」

「誘惑してくる感じ、嫌いじゃない。欲しい」

「欲しいんかいっ!」


貴哉くんは箸で唐揚げを取って、


「ん」


と首を傾げる。

…てかさ。


「え、アーン…みたいな?」

「それ以外無いでしょ…」


貴哉くん、照れちゃったよ。気付かないふりしてた方が良かったかな?

私は大人しく、アーンを受けて唐揚げを頬張る。


「あ、美味しい。何これ、お店出した方が良いと思う」

「分かった、提案してみるね」


貴哉くんが笑いながら冗談を言ってくる。

そういやこれ、間接キスってやつだな?

私に唐揚げよこしてきた箸で、普通に食べ進めてるし。てかまあ、さっきまで普通に使ってた箸で私も食べてたんか。


「まだ食べたいの?もう無いよー?」

「見りゃ分かるわ!」


そう返してると、貴哉くんは急に微笑んだ。


「ん?」

「飛鳥ちゃん、間接キスになっちゃったの気付いたのかなーって」

「あ、うん。気付いたかな」

「…僕も、今気が付いた」

「何、照れてるじゃん!」


貴哉くんは顔を赤くしながら顔を伏せた。
ピュアかっ!


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