君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。


無邪気な顔のまま頷いた。


「私が先に出るとか、そういう発想は無かったの?」

「…俺んとこ、いつも授業終わるの早めだから、飛鳥ちゃんより先だし」

「私がそもそもいないって発想は?」

「んー、ない。欠時なんて付けてないでしょ?」

「前期は欠時ゼロ、後期は少し緩め、ってのが私のポリシーなんで」

「後期、来てくれないの…?」

「前期ほど気合い入れては来ないね。けどまあ、普通に来るよ」


ただでさえそのつもりなのに、クゥーン…みたいな顔されちゃ、そうせざるを得なくなるよね。


「それで…どうしたの?一緒に帰ろうっていうんじゃないよね、方向違うし」

「ちょっと合ってる」

「ん?」

「放課後デートしよ!」


どうしたんだ、デートだなんて。


「デート…?」

「別にデートっていうか、普通に一緒に遊びに行きたいなーってだけなんだけどねっ」

「ああ、うん」

「今まで俺らさ、夏休みに出かけたりとか、休み時間に過ごしたりしてても、放課後出かけるって無かったじゃん?」

「そうだね。放課後なんて5時過ぎだもんね」

「そう、だから行こ!!」

「それは構わないよ、暇だし。
…んで、どこ行くの?」

「決めてないっ!」


そんな堂々と。


「…どこ行こっか?」

「こういう時、女の子ってどこ行くの?」

「…知らん。逆に私が知りたい」


最後に女子だけで出かけたの、果たしていつだろうか…。


「…じゃあ飛鳥ちゃん、今はどこ行きたい?僕どこでも連れて行くよ!」


貴哉くんと行きたい所、か…。


「…どこでも楽しそうだからなぁ」

「ん?」

「あっ、お母さんに何食べたい?って聞かれて、何でも!って答えたら困らせちゃった、みたいな…アレじゃなくてね!」

「俺とならどこでも楽しい、とか言ってくれるの?」

「割とそうじゃない?どこでも楽しそ」

「…へへ」


頑張って普通の表情を保とうとしたんだよね?


「だから、頑張って考える。待ってて?
…あ、てかさ。誘ってきた貴哉くんが行きたい所行こうよ」

「だから…飛鳥ちゃんとならどこでも楽しそう」

「埒が明かないんだけど」

「飛鳥ちゃんも同じこと言ってるからね!」


…うん、まあそうなんだけど。


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