君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
それはそうと、迷子かな…あの2人。
弟くんは大泣きしているが、お兄ちゃんは年齢の割にやけに冷静だ。
「お母さん、どこ行ったんだろ…」
お兄ちゃんがそう呟いて、周りをキョロキョロと見渡した。
私も小柄な方だが、年端もいかない2人なんてもっと小さく、軽く見渡したくらいじゃ分からないだろう。
ましてや何も無い大草原でもないし、物だって置いてあってそれが障害にもなる。
「マァマぁぁ!!」
弟くんが勝手にチョコチョコ動き出した。
「あっ、ちょっ…」
お兄ちゃんが追いかける。
弟くんまで見失ったら大変でしょ…。
はぁ…この後彼らを心配しながら遊ぶのは嫌だねぇ…。ここはいっちょ、老婆心で迷子センターにでも連れて行きますか。
…最近覚えたんだ、老婆心って言葉。
使い方合ってんのかな、これ。まあいいや。
「ねえ、大丈夫?迷子?」
「えっ…」
弟くんを捕まえて肩を掴んだお兄ちゃんが、振り返って私を見るなり、困惑した表情で見つめてきた。
ちょっと私の話し方、高圧的だったかな?
あぁ…しゃがんで目線合わせないと怖いのか。
前、保育体験した時に学んだではないかっ!
私は左膝をついてみた。
「弟くん、不安でウロウロしちゃうと思うけど…。
そしたら捜すの大変だよね、迷子センター行く?」
なるべく物腰柔らかな口調を意識しながら話してみた。
何せ普段、佐倉とか佐倉とか佐倉みたいなツンとした男子とよく絡むもんだから、つい無意識に語調がキツくなってると思う。
気を付けたはずなんだけど…
しっかり者のお兄ちゃんが首を振った。