君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
エレベーターの中で、飛鳥ちゃんは俺のカーディガンの胸元をキュッと握ってきた。
え?何?
「揺らしちゃったかな、ごめん」
「ちょっと怖い」
「えっ」
落としそうとか思われてる?
「落とさないよ、大丈夫」
「うん」
エレベーターを降りる。
「貴哉くん、暖かい…」
「良かった」
「なんか…落ち着く」
そう呟いて、少しだけ俺の胸に顔をうずめてきた気がした。
うぅっ…頑張れ、俺の理性。
耐えるんだ、俺の理性。
確かに飛鳥ちゃんは小柄ではあるけれど、改めて華奢な女の子なんだな、と感じた。
俺の腕の中に、簡単にすっぽり収まってしまう。
保健室に入ると、飛鳥ちゃんをベッドに下ろす。
ブレザーを肩から外して横たわらせて、マフラーをどけて布団を被せる。
とりあえず布団の上に置いておこう。
「紙書ける?」
「あ、僕が代わりに書きます」
保健の先生からボードを受け取って、彼女がいるベッド近くの椅子に腰掛ける。
「いつから体調悪いの?」
「昨日の夜から、何となく」
「昼前の授業は?」
「頑張った」
「症状教えてもらえるかな」
「…頭痛い。目眩した。今もグルグルして嫌な感じ。ぼーっとして、寒気がする」
当てはまりそうな所を丸していった。
「喉痛いとか、他の症状は無い?」
「今の所はない」
「そっか、分かった」
書くべき所にちゃんと記入して、先生に渡す。
「…あ、荷物持って来た方が良いよね。
持って来るね」
「うん…」