君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。


エレベーターの中で、飛鳥ちゃんは俺のカーディガンの胸元をキュッと握ってきた。

え?何?


「揺らしちゃったかな、ごめん」

「ちょっと怖い」

「えっ」


落としそうとか思われてる?


「落とさないよ、大丈夫」

「うん」


エレベーターを降りる。


「貴哉くん、暖かい…」

「良かった」

「なんか…落ち着く」


そう呟いて、少しだけ俺の胸に顔をうずめてきた気がした。


うぅっ…頑張れ、俺の理性。
耐えるんだ、俺の理性。


確かに飛鳥ちゃんは小柄ではあるけれど、改めて華奢な女の子なんだな、と感じた。
俺の腕の中に、簡単にすっぽり収まってしまう。

保健室に入ると、飛鳥ちゃんをベッドに下ろす。
ブレザーを肩から外して横たわらせて、マフラーをどけて布団を被せる。
とりあえず布団の上に置いておこう。


「紙書ける?」

「あ、僕が代わりに書きます」


保健の先生からボードを受け取って、彼女がいるベッド近くの椅子に腰掛ける。


「いつから体調悪いの?」

「昨日の夜から、何となく」

「昼前の授業は?」

「頑張った」

「症状教えてもらえるかな」

「…頭痛い。目眩した。今もグルグルして嫌な感じ。ぼーっとして、寒気がする」


当てはまりそうな所を丸していった。


「喉痛いとか、他の症状は無い?」

「今の所はない」

「そっか、分かった」


書くべき所にちゃんと記入して、先生に渡す。


「…あ、荷物持って来た方が良いよね。
持って来るね」

「うん…」


< 204 / 273 >

この作品をシェア

pagetop