君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
保健室を一旦後にし、エレベーターを待つ。
あれじゃ1人で帰れないよなぁ…。
翔さんに連絡入れておこうかな。
俺が送って行っても良いんだけど、飛鳥ちゃんのことだ。弱い所はあまり見られたくないだろうし。
エレベーターの中で、翔さんにLINEしておいた。
教室に着いて、彼女のリュックを手にし、保健室に戻る。カーテンをそっと開けて入る。
「飛鳥ちゃ…」
すやすや眠ってる。はやっ!
…寝不足だったのかな。
しかも俺のマフラーをギュッとして。
ブレザーだけは返してもらおうかな…さすがに防寒具無しで20分歩くのはね。
「…可愛いなぁ」
思わず髪に手が伸びた。
俺が、最初に惹かれたその髪に、何故だか触れたくなった。
少しだけ脆さを感じたからかな。
俺が守りたい、側にいたい。
それから優しく頭を撫でる。起きてたら、撫ですぎ!って言われそうだけど。
「飛鳥ちゃん…好きだよ」
あっ…。何言っちゃってんだ。あーあ。
寝たフリじゃないことを心から願います。
「ゆっくり休んでね」
保健室を後にした。
…これ以上いたら、余計なこと呟きそうだし。
日本史が終わって、翔さんからLINEが返ってきていることに気付いた。
<あー、そういや寝起き悪かったな>
<こっちからも飛鳥にLINEしてみるわ>
<心配してくれてありがとなー>
いえいえ!と返して、よろしくお願いします、とスタンプを送る。
はあ、良かった良かった。
国総終わり、佐倉くんと金澤くんにたまたま会う。
「なあ、妹尾知らん?連絡つかないんだけど」
昼休みにあったことを2人に話した。
「朝古典で一緒だった時、割といつも通りな感じだったけど、言われてみれば若干元気なさげだったな」
「佐倉くんの前ではちょっと無理してたのかもね」
「あーでも、授業前の話な。
課題提出した人から終わりだったんだけど、2人して手こずってて。
妹尾の方が少し先に終わって、その後何も声かけてこなかったから、授業の間に悪化してたのかもな」
「ああ…」
だからちょっと、教室来るの遅かったのか。