君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
授業が終わって、空き教室あるかなーと各階の廊下を歩いていたけれど、どの教室も人口密度が高かった。
やっぱ何となくだけど、人が少ない所でゆっくり過ごしたいな、と思うからかな。
「あ、ベンチ行こ」
「ベンチ?ああ…」
前に佐倉くんと飛鳥ちゃんが、イヤホン共有して動画観てた所か。
自分の記憶力がストーカーじみてて怖いんだけど。
2人並んで腰掛けて、それぞれご飯を食べる。
いつもより静かな気もするけど、授業で会う飛鳥ちゃんよりかは元気に見える。
「さっき貴哉くん、久しぶりって言ったけどさ」
「え?あぁ…言ったかも」
唐突に話し出す所は、やっぱいつも通りだな。
「土日挟んでるとはいえ、せいぜい4日だけなんだよ」
「…言われてみれば、確かに。
感覚的には凄く長い気がしてたけど」
「それだけ、私と貴哉くんが一緒にいることが普通になってた、ってことだよね」
「そうだねぇ…なんか不思議」
誰か特定の人と、こうやって過ごすことって、高校入学前はほとんど無かったかもしれない。
その後食べ終わるまで、飛鳥ちゃんは何も話を振ってこなかった。
たまには俺から、明るい話題振りたいな。
…とは思いつつ、特に方向性も考えずにこんなことを。
「ねえ飛鳥ちゃん。どんな人がタイプなの?」
「えっ」
俺も同じ反応したよ、心の中で!
「ああっ…いやぁ…」
考えなさすぎもマズかった…!
「大、丈夫です、その…答えなくなかったら別に、良いんだけど…」
やっぱいいや、とは言えなかった。
聞けるなら聞きたかった。
今更な気もするけど。
「んー、あんま考えたことなかったな、そういうの」
俺に、変なの…というような顔を見せたと思ったら、普通に考え始めてくれた。
「じゃあ、好きな人がいたことは?」
「…まあ、無いことは無いかな。でもそんな、付き合いたいとかじゃなかったなー。例えるなら…
ファンみたいな感じ」
「ふぅん…ファン、か」
クラスのモテ男子に、みたいなそういうことだろうか。…俺、それ無理だよ?
「あえて言うなら、優しい人が良いなー。それでいて明るくてポジティブな人」
「…翔さんみたいだね」
「あー、でももし兄妹じゃなかったらタイプかもね」
…あれ?そういや俺、割とタイプに当てはまってる?