君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
「…何かしようってわけじゃないからね?その…不安にさせたなら他の場所考えるけど」
「急に行っても大丈夫なの?」
「飛鳥ちゃんの家行ったのも、突発的な提案だったじゃん。俺ん家も大丈夫だよ」
「ああ…」
「来る?」
飛鳥ちゃんは俺の腕の中で頷く。
じゃあ決まったということで。
彼女を解放しようとしたら、キュッと裾を握ってきた。
え?まだ離さないでってこと?
ちょちょちょっ…なんて思っていると。
「絶対顔ヤバいから、ダメ」
「へっ?」
1ミリも想像していなかった反応だった。
早とちり恥ずかしい。
「メイク直してくるからちょっと待ってて?」
「あぁ、うん、分かった」
彼女は、俺に顔を見せずに教室を後にした。
そんな背中を見送る。
ちょっとだけ、いつもの飛鳥ちゃんに戻った気がする。鼻声で、引っかかった声はしているし、話し方に覇気もないけど。
10分くらいして、お待たせと言って戻ってきた。彼女の元に歩いていく。
たった10分で、いつもと変わらない飛鳥ちゃんになった。…気がしたけど、やっぱり目元はなぁ。
「目元腫れてる」
と、つい指を伸ばす。
「あ、いや、なんでもない」
「うん?」
不思議そうな顔をされたけれど…。
抱き締めたせいか、ちょっと距離感が近くなり過ぎたかも。