君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
学校を後にして、十羽家に向かう。
その途中で飛鳥ちゃんが急に話を振ってくる。
「ああ、ねえ貴哉くん。マフラー…」
「ん?マフラー?」
「ほら、保健室で…」
「ああ、倒れた時置いて行った…」
どこやったっけ…?って思ってたくらいだ。
そういえばそうだった。
「2週間近く経ってるなって…今思い出したんだけど。
1回洗った後、翔に私のだと勘違いされて使われて、また洗って紙袋に入れるまではしたんだけど…」
「忘れ…たんだね」
「…うん。傘貸した時、すぐ返してくれたのに。
しかも貸す前より撥水してる気がしたんだよね。貴哉くんの防水パワーかな」
防水加工のお手入れとかまでして返したからね。
…俺の防水パワーって何だ。
「明日持って来るね」
「うん、分かった」
そういうことあるよね。
うっかり忘れて、忘れたことを更に忘れるって。
家に着いて、リビングに彼女を通す。
家に2人きりだから、二重に2人の空間を作ることもないだろうし。
…さすがに部屋に招き入れるのは、マズイよね。
「お父さんとお母さんは、お仕事だっけ?」
「うん。だから、気遣わないでいくらでも話せるよ」
2人でソファに座って、飛鳥ちゃんにあったことをゆっくり聞いた。
俺が何となく察していたことは、ほとんど勘違いじゃなかった。