君と紡ぐ物語は、甘くて愛おしい。
ダンスの後、急いで着替えて、先週の火曜と同じ教室に行く。
貴哉くんはまだっぽいな…。そう思ってふと携帯に目をやると、何やら点滅している。ん?
貴哉くんからLINEだ。
<教室どこー??>
あ…迷子…察し。
まさか貴哉くんとのトーク履歴初っ端、教室どこー??になるとは思ってなかった。
「あっ!いた!」
廊下の方から声がする。少し慌てたようにやってくる貴哉くん。
「教室忘れちゃったの?」
「番号は覚えてたんだけど、位置が分かんなくなっちゃって。ええっ?!ってなってた…何なら声に出してたかも」
「周りにいた人に、ヤバい人認定されたじゃん、それ」
「え、やだっ。飛鳥ちゃんにはヤバい人認定されたくないよ?」
「貴哉くんだったらならないよー」
ええっ?!って、1人で慌てる貴哉くんを想像するのは容易いな。そして可愛いっていうね。
「えー、何でうっすら笑み浮かべてるのー?」
「想像して楽しんでた」
「むぅ…悪趣味…」
「ね、そうかもね。人が慌ててるの見て、可愛いって思っちゃうのは悪趣味かもしれない」
そう言うと、貴哉くんは急に真顔になった。
え?なになに?怖い!
「俺だって男なんだけどな?可愛いより、カッコイイの方が嬉しい」
…はい?
思わずキョトンとしてしまう。
「本気」
キョトンのままでいると、貴哉くんは我に返ったようで、恥ずかしそうに目を伏せた。
「ごめんつい…。何でもない」
よく分かんない人だ。私みたいに、思ったことそのまんま素直に言っちゃうタイプなんだろうか。